ある話をひとつ。
ある春が終わり夏が始まる頃、仕事も終わり、本屋へ寄って帰った。
夕陽を背に家路へととぼとぼ歩いていたところ、遠くの方でカラスが飛んでいるのを見つけた。
「夕暮れ時にもカラスはいるんだなぁ、夜って何処に居るのかな」とか考えていた。
しかしながら、そのカラスあきらかにおかしい。
一定の高さのまま羽を動かす様子もなく飛んでいた。
と、家の方向へ曲がる道へ入り、カラスを見失った。
次の日
やはり気になり同じ時間、同じ場所へ来てみた。
すると向こうの方からあのカラスが飛んで来るのが見える。
カラスを凝視した。
薄々気づいてはいたがカラスじゃなかった。
黒く長い髪がワサワサと飛んでいる。
真上を通る時、、みた。
一瞬ではあったが顔が見えた。たぶん女性だと思う。
と、通り過ぎていった髪の塊を追っかけた。
所謂、好奇心・怖いもの見たさである。
しかし、すぐ近くの河で断念した。
ちょっと離れた先の橋を渡った頃には見えなくなていた。
次の日から、その時間のその場所は避けるようになった。
小中学生が夏休みという頃、新聞に載っていた記事を見てもしかしてと驚いた。
あの河で遊んでいた子供が女性の白骨死体を発見したとのこと。
そして、あの橋の下に横たわっていたという。
あの首は自分の場所を見つけて欲しかったのか。
自分はあの橋から見ていたのかもしれない。
終わり